「だし」とは

【はじめに】

「だし」と聞くと、昆布・かつお節など和食につかうだし、を思い浮かべませんか?
実は、それはほんの一部。「すべての素材からだしはとれる」のです。
トマトからも豆腐からも、ネギからも。
100種類の素材があれば100種類のだしが存在します。大きく分けると

だしとは…天然素材の持つパワーで、すべてのベースになるものなのです!

 

 

【うまみのトライアングル】

 

 

【日本の乾物だし素材】

だしソムリエ検定講座では、日本の乾物だし素材を知り、テイスティングを体験した1級講座で「だしと料理」についてプロから学ぶという流れになっています。
日本の乾物だし素材をまず知っていただくということで、一部をご紹介しておきます。

「かつお節」

日本料理に欠かせない「かつお節」。
独特の香りとうまみは日本人にとって懐かしさを感じさせるもの。だしをきちんと取ることで塩分や調味料を減らすことにつながり、また、最近では、フレンチやイタリアンなど西洋料理の隠し味のだしとして使われることにも注目が高まっています。

「かつお節」には何種類かあります。製造の工程によるもので、大きく分けると、

荒節
枯れ節(または本枯れ節)

「荒節」は、かつおを解凍、生切り(頭部分と内臓部分を切ること)、煮熟(煮ること)、骨抜き、ばいかん(燻製作業)、あん蒸(暗室で寝かすこと)まで約1ヵ月くらいで作られたもの。表面は黒く焦げたような色をしています。スーパーでよく見かける「花がつお」はこの状態のものを削ったものです。さらに、このタール部分を削って赤茶けた表面になったものを「裸節」といいます。ここからカビ付け作業をして枯れ節作りに入ります。


「枯れ節」は、荒節が出来上がってからさらにカビ付けをして仕上げます。カビは、かつお節の表面が茶色い粉で覆われているように見えるものです。
といっても一般的に目にする青カビとは成分が異なる優良カビ。枯れ節は、一定の温度のと湿度の部屋でカビ付けを2度以上繰り返し、水分を13%以下にしたものしか名乗ることを認められていません。完成までに半年近くかかります。料亭のお吸い物、茶碗蒸しなどに使われ、魚臭さがなく上品な風味です。


かつお節のうまみ成分は、核酸系のイノシン酸。昆布のグルタミン酸と一緒になると相乗効果でよりいっそううまみを感じられるようになります。

その他、かつお節の仲間として、高知県土佐沖で取れる「宗田がつお」、日本全国まんべんなく取れる「さば節」、中部地方で好まれる「むろあじ節」、あっさりした風味の「まぐろ節」、濃い目のだしが取れる「いわし節」などがあります。

「昆布」

昆布は北海道と東北で採集され、ほぼ国産100%の海の幸です。昆布とひと口にいってもかなりたくさん種類があり、出来具合によって1等、2等、3等…など等級付けされています。
昆布はまるでワインのよう。ビンテージワインのように、何年か専用の蔵で寝かせて熟成させ、まろやかな香りを実現しうまみを増やします。
以下、代表的な昆布たち。
「真昆布(マコンブ)」…函館から室蘭にかけてとれる上級品。表面が淡褐色で切り口が白く、高級だし昆布、塩昆布、おぼろ昆布、切り昆布などに使用。
「日高昆布」…別名ミツイシ昆布。日高地区を中心に、広尾~日高~室蘭の道南地区の一部に生育。一般家庭用のだし昆布として、煮上がりが早く、軟らかく味がよいので総菜用としても。


「利尻昆布」…利尻、礼文両島を中心に、留萌~稚内~北見で生産される。真昆布に比べてやや硬いが、だし汁が透明で風味がよく高級料理用とされている。

「羅臼(ラウス)昆布」…産地は羅臼。香りがとてもよく、味が濃い名品といわれる。だし汁がにごる欠点があるが人気が高い高級銘柄。軟らかく口あたりが良いので、そのまま細切りにして食べてもおいしい。

「ナガ昆布」…道東沿岸で採取される。その名の通り、6~15メートルもある!おでん、昆布巻き、佃煮などの大衆的な料理に好まれる。

「利尻系ナガオニ昆布」…羅臼を中心とした知床半島沿岸で採取され、色は褐色で葉が大柄で厚みが薄い。真昆布に対抗する高級品。

「ホソメ昆布」…細めの歯形で、粘りが強くトロロ昆布用。

「ガゴメ昆布」…裏面が篭の目に似た凹凸がある。強い粘りがあり、おぼろ、トロロ材料として用いられている。

「乾しいたけ」

独特の香りと味を持つ乾しいたけ。
椎茸は干すと、酵素の働きによって味・香り・旨みが変化します。
種類はとても豊富で、大別すると傘の厚みによって「冬子(どんこ)」「香信(こうしん)」に分かれます。ここからさらに、大きさや形によって種類が細かく分かれていきます。

乾しいたけのうまみ成分はグアニル酸。このグアニル酸、かつお節の「イノシン酸」、昆布の「グルタミン酸」とともに、日本料理の三大うまみ成分と言われています。 ちなみに、グアニル酸は、過熱して調理するときに増加します。
ですが生の状態ではグアニル酸はほとんど含まれず、生椎茸の中の細胞に含まれるリボ核酸という物質が、酵素の働きによって分解されてグアニル酸に変化するのです。

独特の香りは「レンチオニン」という生椎茸にはない香り。これは乾燥させる過程や水に入れて戻す最中に酵素の作用によって生まれます。でも、この香りが苦手な人も多いようです。

主な生産地は大分県、熊本県、静岡県など。生椎茸の製造方法は、日本では昔ながらの「原木方式」(クヌギなどを使った製法)が多く、玉切りした原木に電気ドリルで植え穴を開け、しいたけ菌糸の入った種駒を植えつけます。伏せ込みを経て、春と秋に収穫します。仕上がりまで2年以上が必要です。

「煮干し」

明治20年ごろから関西を中心に製造されたとされる煮干し。
煮干しには2つの意味があり、1つは煮干しイワシ、もう1つは魚介類を一度煮熟してから乾燥させた商品の総称。広い意味での煮干しには、鯛、ホタテガイ、イタヤガイなど貝柱、干しエビなども含まれます。

同じ魚類のだしでも、かつお節に比べて製造工程も短く、安価で手に入りやすい煮干しイワシは、栄養価が高いです。カルシウム、鉄、ビタミンD、たんぱく質などを豊富に含みます。
また、うまみを加えるイノシン酸はかつお節の約2倍の量を含むとされています。ただしかつお節は燻製作業やカビ付け作業製で、脂肪分や水分をそぎ落とされ魚くささがなくなるのに対し、煮干しはそのシンプルな製造工程ゆえに独特の魚らしい香りになります。味噌との相性がよく味噌汁に使うのにおすすめです。
以下、代表的な煮干しの特徴です。

イワシを使った煮干し

「片口煮干し」
カタクチイワシを原料とした煮干し。カタクチイワシは下あごが上アゴよりずっと短く口が裂けたような感じです。生産量は千葉が一番多く、全国の半分以上を占めています。味が濃くコクがあります。煮熟後2~3日天日干しし、乾燥機にかけて乾燥させます。

「平子煮干し」
マイワシを原料とした煮干し。マイワシは体に一列か二列の青黒い斑点があるのが特徴。カタクチイワシに比べると味が薄く、コクも少なめ。煮熟後すぐ乾燥機にかけて乾燥させます。

「うるめ煮干し」
ウルメイワシを原料とした煮干し。ウルメイワシは長崎が主な線産地で全国の80%を占めています。マイワシ同様に煮熟後すぐ乾燥機にかけて乾燥させます。他のイワシに比べて脂肪が少なく、だしは淡白で甘みがあります。

それ以外の煮干し

「あご煮干し」
九州を中心に西日本で昔からよく使われるだし。色々な料理に使えますが、特に麺類(そば、うどん、ラーメンなど)にはよくあいます。あごの煮干しは上品でスッキリとした甘味とうまみがあるだしがとれます。

「あじ煮干し」
あじは削り節としても使われるほか、煮干しとしても使われます。削り節同様にあっさりしただしが楽しめます。

「鯛煮干し」
鯛をまるごと使った煮干し。西日本でよく使われるます。原魚の鯛同様に、あっさりすっきりとした甘みのあるだしが取れます。

「その他のだし」

だしを使うのは日本料理だけではありません。「煮込む」料理工程では、だしが料理の仕上がりの重要な役割を持つことはフランス料理や中華料理でも同じです。

フランス料理のだし

煮込み料理では欠かせないフランス料理のだし。牛や鶏、魚などの動物性材料のほかに、香味野菜は煮込むと肉や魚の好ましくない匂いを消すので、香りづけの役割も持ちます。フランス料理のだしは、ブイヨンとフォンの2つに大きく分かれます。「ブイヨン」はポタージュやコンソメの土台で、「フォン」はソースや煮込み料理の土台になります。

中華料理のだし

西洋料理が香りを重視するのに対して、中華料理は油を使った濃い料理に合う、コクとうまみがあるだしが好まれます。
鶏や豚を長時間煮出し、香りづけよりは臭みを消すために香味野菜や香辛料を加えた味の濃いだしが使われてきました。中華の出しは「湯(タン)」と呼ばれ、動物性のだし(ホウタン)と植物性のだし(スウタン)におもに分かれます。

ヘルシーで健康によいと世界中で見直されている日本料理。その理由のひとつに、だしをしっかり取って濃い味つけや油っぽさを極力控えていることもあります。今後は、独自の食文化を持つフレンチや中華に、日本のだし文化が融合していくことが期待されます。